
2013/07/31
東北復興と生物多様性— 海と田んぼからのグリーン復興プロジェクト
東日本大震災で被災した東北沿岸部は、人・海・田んぼ そして森のつながりからなる生態系の豊富な恵みと景観の美しさで人々を魅了する地域でした。この地を襲った津波による甚大な被害は計り知れず、まだ復興の著についたばかりです。防災、減災対策をもっとも重視することは当然ですが、一方でこの地域特有の農林水産業を中心とする営みの回復なしに復興はあり得ません。
防潮堤の高さや復興住宅の建設場所の議論はもちろん大事ですが、本来、生物や生態系がもつ多様性の力と先人の知恵を活かし、自然と上手に共生する復興プランができれば、経済的にも、時間的にも、将来世代が受け取る利益は大きくなるのではないでしょうか。震災直後より、このような視点から東北大学生態適応グローバルCOE※は、東北のNPOや首都圏の企業とともに、生態系に適応したグリーン復興を提唱し、海と田んぼからのグリーン復興プロジェクトの事務局を務めてきました。
現在は主に①被災地生態系のモニタリング②塩害被害の水田の復元③浦戸諸島の島おこしの3つのプロジェクトが動いています。この他にも海岸林の調査・研究、海岸の植物の生態系保全など、それぞれの主体が独自予算のもとで活動を推進し、その成果や課題の情報交換を2、3ヵ月に一度、行っています。大学は討議の場の提供と教育・研究の観点から独自プロジェクトの実施と他のプロジェクトのアドバイザーを務めています。
毎回、環境省東北事務所も参加し、三陸復興公園など国の事業も視野に入れ、産官学民の連携により、被災地の自然の力を活かした持続可能な街づくり、営みの再生を目指して、国際社会にも、その成果を発信しています。生物多様性、自然との共生復興に感心のある方はどなたでも参加できます。詳細は下記サイトをご覧ください。https://sites.google.com/site/greenfukko/
※グローバルCOE:世界的研究拠点。文科省の5カ年プロジェクトで本拠点は2013年3月末終了。現在は生態適応センターが業務を継承。
◆教員の皆様へ
生態適応センターでは、生物多様性の講義に必要な情報と素材を図、グラフ、写真やイラストを多用した約500ページのスライド教材を刊行しました。生物多様性問題の現状把握と解決に向けた正しい理解の一助として、活用いただければ幸いです。教員の方には、下記のサイトより無料でダウンロードできます。
http://gema.biology.tohoku.ac.jp/textbook2/
生物多様性の未来に向けて
講義のためのプレゼン教材 第2版
東北大学生態適応グローバルCOE制作
東北大学大学院生命科学研究科生態適応センター 2013年3月発行
(東北大学生命科学研究科 客員教授 竹本徳子)