
みどり(MIDORI)
「みどり」は、新芽や若葉の色、あるいは植物そのものを表す言葉であり、森林や自然、環境を指す言葉としても使われます。
「みどり」という言葉が登場するのは、平安時代(794年〜1192年)になってからといわれています。本来「瑞々しさ」を表す意味であったらしいのですが、それが転じて新芽の色の意味になったようです。
一説には、特定の色を表す以外に、「一面にまじり気のない」「一色で塗りつぶされている」様子を表す言葉であったといわれています。
ちなみに、英語の「グリーン(green)」は、「草(grass)」や「育つ(grow)」と同じ語源から生まれた言葉であり、現代の日本語では「みどり」と同様の意味で使われています。
漢字では、「緑」のほか、「碧」や「翠」とも表記されます(「翠」はカワセミの羽根の色を指す言葉であったそうです)。「碧」や「翠」は、やや青みの強い色を指すことが多く、欧米人にとっての「グリーン」は、日本人にとっての「緑」よりも明るく鮮やかな色を指すといわれています。
詩的・文語的な表現として、海の深く青い色を表すのに「みどり」を使うことがあります。海と山に囲まれた環境の中で過ごしてきた日本人にとって、「みどり」は地上にある自然を指す言葉だけでなく、生命の源である海を表現する言葉でもありました。
また、女性の艶やかな髪の色を「みどりの黒髪」、生まれたばかりの子どもを「みどり児」と言うなど、本来の意味である「瑞々しさ」を表現する言葉としても使われています。
このように「みどり」は、単に色を表す言葉でなく、豊かな自然、新鮮なイメージを表す言葉として、日本語の中に深く浸透しています。「みどり」が持つ言葉の意味をあらためて知ることが、日本人と自然・生命とのかかわりの歴史を知ることにつながり、これからの生物多様性のあり方を考えるヒントになるのではないでしょうか。