
2010年 The MIDORI Prize for Biodiversity 受賞者
- ジャン・ルミール
- カナダ
生物学者 探検家 映画製作者
受賞のことば
生物多様性は生活の基盤です。私達は、アジア、欧州、アフリカ、アメリカのどの大陸においても、生きていくために生物多様性に依存しています。それでも、現在のライフスタイルはこれまで以上に不可逆的な損害を地球に与え、真の脅威を地球の未来にもたらしています。動植物種は絶え、かつてない速さで死滅しつつあります。このことを認識し、私達が共有している環境にある、様々な形態での生命の持続可能性を確固たるものにするため、私達は一丸となり、開発のルールを変えていかなければならないのです。今日、私達は自分自身に重要な問題を問いかけねばなりません。私達は将来の世代にどんな遺産を残したいのでしょうか?
私達はこれまで以上に、ただひとつのかけがえのない私達の地球について、教育を行い、意識を高め、この脆弱な世界の美しさを訴えていかねばならないのです。誓い、発見、イメージを介して、多様で素晴らしい地球が直面している悲惨な状況を人々に伝え、魂に触れ、重大な変革を主導することこそ私達の義務なのです。私達は世界のリーダー達に対し、無計画な開発を報告し、持続可能な開発に一致した新たな価値観を求めねばなりません。全ての文化圏にいる若い人達へ、生態系が危険にさらされていることを伝え、生態系を保全するこの驚くべき冒険への参加を呼び掛け、全ての生命を尊重していくことが、私達の使命です。
未来は私達の手の中にあります。若い人達、明日のリーダーたち以上に、抜本的な変革の風を起こし、全ての生存種の衡平な配分とあらゆる形態での生命に対する尊厳を推し進めることのできる人がいるでしょうか?
若い人達への教育を目的とした、生物多様性に関する世界的な意識啓発キャンペーンである「グリーン・ウェイブ」の名誉大使としての使命に基づいて、私はこの活動に打ち込んでおります。今日、栄えあるThe MIDORI Prize for Biodiversityは、私達のミッションに新たな希望の息吹を吹き込み、私達の航海を希望で満たし、よりよい世界へと向かうセドナ号での長い旅を支援して下さるものです。
全ての若い人達を代弁して、心からお礼申し上げます。「どうもありがとうございます。」
プロフィール
ルミール氏(1962年生まれ)は、生物学者でもあり映画製作者でもあるというユニークな経歴を活かして、環境問題の意識啓発に多大に貢献し、とりわけ生物多様性や気候変動問題に関連した活動に積極的に取り組んでいる。
ルミール氏はこれまでに映画の製作を通じて、環境問題に対するメッセージを発信してきた。例えば、2006年には探検隊長としてセドナ号(51メートルの全装備ヨット、高精度の科学・撮影機器を搭載)による15ヶ月間の南極探検を実施した。この探検の様子は長編ドキュメンタリー映画「最後の大陸(The Last Continent)」および科学TVシリーズ「南極でのミッション(Antarctic Mission)」に収められている。また、探検中は衛星やインターネットリンクを介して、気候変動に直面した海洋や南極の生態系の脆弱さなどについて多くの子どもたちが学ぶ機会を提供した。
2010年5月、ルミール氏は生物多様性条約事務局により「グリーン・ウェイブ」の名誉大使に任命された。グリーン・ウェイブの目的は、生物多様性に関する問題についての意識を高め、子供たちや若者が生物多様性に関連した活動に参加する機会を増やし、生物多様性の持続可能な利用、生態系と生態系サービス、生物多様性の保全、気候変動が生物多様性に与える影響といった、生物多様性に関連した概念について一般の理解を深めることにある。2011年春出航のセドナ号の航海は、グリーン・ウェイブの使命とも一致している。すなわちこの航海の目的は、「遅くとも2020年までには、すべての人々が生物多様性の価値及び生物多様性を保全し持続可能に利用するために自分たちが執ることができる手段を認識する」という、生物多様性条約の戦略計画2011-2020 目標A(2010年10月に第10回締約国会議において採択)に合致している。ルミール氏の映画監督兼探検隊長としての役割とグリーン・ウェイブの使命を統合することで、ルミール氏は今後、世界規模でより多くの子どもたちや若者を巻き込んでいくことが期待されている。
ルミール氏はこれまでにも環境教育の啓発に貢献してきたが、これからも自身の活動を通じて、生物多様性を含めた環境問題のメッセージを発信し、世界中の人、とりわけ次世代を担う若者と共に環境問題に取り組んでいくことが期待されている。これは、The MIDORI Prize for Biodiversityの趣旨と合致しており、受賞にふさわしいとして評価された。
※ このプロフィールは2010年に作成されたものです。
主な経歴
- 1985年
- シャーブルック大学 生物学部卒業
- 1987年
- Ciné-bioプロダクション設立(ドキュメンタリー映画製作の際の科学面監修、脚本作成)
- 1994年
- 映画『Marine Mammals Mission(海洋哺乳類ミッション)』 制作
- 1996年
- 映画『Encounters with the Whales of the St. Lawrence(セントローレンス島のくじらとの遭遇)』制作
- 1998年
- 映画『The Last Frontier(最後の辺境)』制作
- 2001年
- Glacialis(自然科学、海洋学、文化芸術に特化したプロダクション)設立
- 2002年
- 映画『Memories of Earth(地球の記憶)』
セドナⅣ号による南極探検(5ヶ月間) - 2004年
- セドナⅣ号による鯨に関するミッション
- 2006年
- 映画『The White Planet(白い惑星)』共同製作・共同監督
セドナⅣ号による南極探検(15ヶ月間) - 2007年
- 映画『The Last Continent(最後の大陸)』制作
- 2010年
- 生物多様性条約事務局よりグリーン・ウェイブの名誉大使として任命される
主な受賞歴等
- 2004年
- カナダ王立地理学協会 ゴール・ドメダル
- 2007年
- カナダ環境賞 特別功労賞
- 2008年
- カナダ国勲章、名誉博士号(カナダ、ケベック大学リムスキー校)、グレート・アンバサダー(カナダ、シャーブルック大学)
主な著作等
- 2007年
- 『Mission Antarctique(南極でのミッション)』ラ・プレス版
- 2009年
- 『Le Dernier Continent(最後の大陸)』ラ・プレス版