
2010年 The MIDORI Prize for Biodiversity
国際生物多様性年特別賞 受賞者
- アンゲラ・メルケル
- ドイツ
ドイツ連邦共和国首相
プロフィール
メルケル首相(1954年生まれ)は、2005年ドイツ連邦首相に就任以来、元連邦環境・自然保護・原子力安全大臣としての経験などをいかし、気候変動や生物多様性といった地球規模の環境問題に関し、強いリーダーシップを発揮してきた。
特に、生物多様性については、2007年にドイツ・ハイリゲンダムで開催されたG8首脳国会議において、「生物多様性は生態系サービスの提供、及び世界経済に対する自然資源の長期的な供給に関し、必要不可欠な基礎である」ことなどを首脳宣言に盛り込み、G8として初めて生物多様性を主要なテーマとして位置づけることに成功した。これにより、「生物多様性」は、「気候変動問題」とともに、G8各国の首脳が取り組むべき優先的な政治的課題としての地位を確立したといえる。
また、メルケル首相の強力なリーダーシップの下、ドイツ政府は特に民間セクターにおける生物多様性の主流化に力を入れてきた。ハイリゲンダムサミットに先立ち、同年ポツダムにおいて開催されたG8環境大臣会合では、「ポツダムイニシアティブ―生物多様性2010」がとりまとめられた。同イニシアティブに基づき、ドイツ政府は通称「生物多様性版スターンレビュー」とも呼ばれる「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」レポートの作成に着手し、経済的な側面からの生物多様性の評価を進めた。
さらに、翌2008年には生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)を主催し、生物多様性とビジネス(B&B)イニシアティブを創設した。これらのドイツ政府の取組により、第8回締約国会議(COP8)で始まった生物多様性への民間参画の流れは、より確実なものとなり、2010年10月に日本で開催されたCOP10に引き継がれた。
COP9閣僚級会合においては、ドイツは生物多様性の保護を目的とした財政的な支援について先導的な役割を担った。例えば、保護区域の拡大のための自主的な取組であるライフウェブ・イニシアティブの実施のため、2009年から2012年までの間、森林やエコシステムの保全に5億ユーロの支援を約束し、それ以降はさらに毎年5億ユーロを支援すると発表している。
なお現在、国連環境計画(UNEP)の場などで設立が検討されている「生物多様性及び生態系に関する政府間プラットフォーム(IPBES)」についても、メルケル首相は強い支持を表明している。これは、生物多様性版の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」ともいえるもので、政策決定における生物多様性に関する科学的情報が飛躍的に充実することが期待されている。
以上のように、メルケル首相は生物多様性を国際的なトップ・アジェンダとして位置づけるとともに、TEEBやB&Bイニシアティブにより生物多様性の主流化を強力に推進した点などが高く評価された。
同首相は現役のドイツの首席大臣ではあるが、国際的な観点から同氏が生物多様性の分野で果たした功績は顕著と認められることから、特に、国際生物多様性年を記念する特別賞として、同氏の貢献を顕彰することとした。
※ このプロフィールは2010年に作成されたものです。
主な経歴
- 1978年
- ライプツィッヒ大学物理学科卒業
- 1986年
- 理学博士号取得
- 1978〜1990年
- 旧東独科学アカデミー付属物理化学中央研究所研究員
- 1990年
- 政府副報道官
- 1990年〜
- 連邦議会議員
- 1991〜1994年
- 連邦女性・青少年大臣
- 1994〜1998年
- 連邦環境・自然保護・原子力安全大臣
- 1998〜2000年
- キリスト教民主同盟(CDU)幹事長
- 2000年〜
- CDU党首
- 2002〜2005年
- 連邦議会キリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)会派院内総務
- 2005年〜
- 連邦首相(2009年10月より二期目)
主な受賞歴等
- 2006〜2009年
- 「世界で最も影響力のある女性」(フォーブス誌)
- 2007年
- 名誉博士号(イスラエル、ヘブライ大学)
- 2008年
- ドイツ連邦共和国功労勲章大十字章受章
アーヘン国際カール大帝賞(ドイツ、アーヘン市)
名誉博士号(ドイツ、ライプツィヒ大学)
名誉博士号(ポーランド、ヴロツワフ大学)